以前に「なぜX JAPANは東京ドームでライブをやらなくなったのか?」という記事を書きましたが、今回はその後編として「X JAPANが東京ドームでライブをするための条件」というタイトルで記事を書くつもりでした。
ですが・・止めました。なぜなら今回の「X JAPAN JAPAN TOUR」を回っているうちに、
「あっもうYOSHIKIにとって、東京ドームでライブができるかどうかなんて関係ないんだ」
と気付いてしまったからです。
X JAPANにとって東京ドームはホームグラウンドであると同時に、海外に対して「バンドとしての格」を表すわかりやすい「ステータス」でもありました。
少なくとも2010年頃までのYOSHIKIなら、東京ドームでライブをすることにある種の「こだわり」や「プライド」を持っていたはずです。
しかし今回の「JAPAN TOUR」で感じたのは、ライブ会場への「こだわり」ではなく、日本全国のファンに直接逢って想いを伝えたいというYOSHIKIの「ケジメ」でした。
思えば20年前のDAHLIAツアーでは、仙台、福岡、横浜公演がYOSHIKIの椎間板ヘルニア発症によりやむなく中止となりました。その後X JAPANは解散し、振替公演は永遠に行われないものと誰もが諦めかけました。
そして月日は流れ、20年後の2015年・・「振替公演」は紛れもなく行われたのです。「JAPAN TOUR」と名前を変えて。YOSHIKIはこれを「ファンが作ってくれた奇跡」と表現しました。
今回の「JAPAN TOUR」では、YOSHIKIはどこの会場でも必ず「ファンへの感謝と御礼」を口にします。あれだけ口下手で、解散前はほとんどライブでしゃべることのなかったYOSHIKIが、今回の「JAPAN TOUR」では積極的に自らの言葉でファンに想いを伝えようとしています。
大阪、福岡公演でYOSHIKIは「20年前はホテルの壁を壊してたけど、今は世界の壁を壊そうとしている。俺たち進歩したよね。」と笑って語っていました。そして「ファンのみんなが支えてくれたから今の俺たちがある。」とも。
この言葉はファンへの感謝と同時に「俺たちみんなのパワーをもらって世界に行くね」という前向きな別れのメッセージのように感じて仕方ないのです。
アルバムを完成させる前に、(レコーディングが佳境を迎えるとわかっているにも関わらず)このタイミングで「JAPAN TOUR」を開催したのは、どんな時も支え続けてくれた日本のファンと一緒に、Newアルバムを作りたいというYOSHIKIの潜在的な思いがあったからではないでしょうか。
ツアー最終日をWOWOWで放送するのも、12/25のMステのスーパーライブに出演するのも、紅白歌合戦への18年ぶりの出場を決めたのも、ライブに来れない日本全国のファンに対するX JAPANなりの「感謝とケジメ」なのでしょう。まるで「2015年は日本のファンへ、精一杯恩返しをする」と腹を括ったようなスケジュールです。
2016年、日本のファンの声援を原動力に、東京ドームでライブをするX JAPANよりも、海外で次々と壁を壊し、世界一を目指すX JAPANの姿のほうがよっぽど鮮明に想像できませんか?
すでにYOSHIKIはアルバム発売後の世界に照準を合わせています。少なくとも数年間は海外での活動が中心になるはずです。日本でのライブはしばらくないでしょう。だからこそ残り広島と名古屋の3公演、X JAPANが世界に羽ばたけるよう全身全霊を込めて声援を送りたいと思います。
X JAPANが世界に挑戦するのはすごく嬉しいけど、ちょっぴり悲しくもある、複雑な気分です。でもYOSHIKIが決めたことを最後まで見届けたいと思います。