2007年に奇跡の再結成を果たしたX JAPAN。それから新たに始まったX JAPANの軌跡は、解散前の活動期間をとうに超えて、今年で11年目を迎えるなんて誰が想像できただろうか。11年の間にシングルとして発売した楽曲は4曲。アルバムはベストアルバムが1枚、サウンドトラックが1枚、ライブ回数は66回(2018年9月末時点:フェス含む)。解散前に比べれば新曲のリリースタイミングはスローペースになったものの、解散前よりもコンスタントに世界各国でライブをこなし、今もなお世界中でファンを増やし続けている。
そして2018年9月、YOSHIKIが遂に待望のNewアルバムが完成したことを発表した。復活から丸11年、前回のオリジナルアルバム「DAHLIA」から22年・・途方もない歳月を得て、遂に「約束」のアルバムは完成したのだ。
果たしてこの「約束」は誰との約束だったのか?突然この世を去ったhide、Taiji・・そしてX JAPANがどんな状況でも応援し続けていた世界中のファン・・いやそれだけではない、アルバムを完成させることはYOSHIKIとToshlがX JAPAN復活を決めたときの「2人の約束」でもあったのだ。
復活当時のToshlはどこかのインタビューで「新しいアルバムを完成させることに、今は全力を注ぎたい」そんなことを語っていた。最初のアルバム構想は、過去曲を英語詩に書き直して再レコーディング、新旧楽曲を交えた構成が検討されていたが「すべて新曲でいこう」とYOSHIKIが方針転換。当初は200×年発売予定となっていたアルバムは、2018年ようやく完成の時を迎えた。
この11年間、YOSHIKIはアルバムのレコーディングに莫大な時間を費やし全身全霊で打ち込んだ。他メンバーもYOSHIKIの想いを最大限尊重し、試行錯誤を繰り返しながら共にNewアルバムを創ってきた。特にToshlは、発売に至らなかった過去曲の英語バージョンのレコーディング、結果的にNewアルバムに入らない「Scarlet Love Song」のレコーディング、途中で没になった楽曲も多々あっただろう。どんな状況でもYOSHIKIのディレクションを仰ぎながら、ボーカリストとして最大限のポテンシャルを発揮したはずだ。それは復活当時に二人で決めたNewアルバム完成という「約束」を果たす使命感に他ならなかった。
1年半ほど前だろうか、YOSHIKIはインタビューで「Newアルバムの歌入れはすべて終わっている」と語っていた。Toshlはその時点で「自分のやるべきことはやった」そんな達成感を持ったのではないか。その後もYOSHIKIは楽曲の完成度を高めるために、ボーカルエディットやレコーディングを継続するが、Toshlにとっては「歌入れの完了」が一つの区切りだったのだろう。
その頃からToshlは様々なことに挑戦するようになった。バラエティ番組への出演や精力的なライブ活動、他アーティストとのコラボ、カバーアルバムの発売・・ソロ名義を「龍玄とし」と名乗り、独自の活動を加速させていく。
「僕がバラエティで弾ける理由」というインタビューでToshlはこう語っている
Newアルバムのレコーディングという重圧から解き放たれ、前向きに人生を楽しもうとするToshl。その活動がYOSHIKIとの軋轢を生んでいるという言われなき記事もあったが、9月15日に約半年ぶりに開催されたX JAPANのライブを目撃したファンは確信したはずだ。ToshlはX JAPANから距離を置こうとしているわけではない、ただToshlにとって今のX JAPANは
ことの一つでしかない。X JAPANに人生を懸けるYOSHIKI、人生の一枠であるというToshl。このX JAPANへの姿勢の違いが微妙な距離感を生んでいることは明らかだ。
一時期ファンの間で物議を醸した「RED SWAN」。今回発売されるアニメ書き下ろしのシングルジャケットにはXポーズを決めたリヴァイ。そう「RED SWAN」はX JAPAN名義で出すことはYOSHIKIを含む関係者の間では既定路線だったはずだ。
しかし「Toshlとのレコーディングスケジュールが合わなかった」という理由でHYDEに白羽の矢が立つ。一方Toshlは後のインタビューで「歌えなかったことは個人的には残念」とも語っている。なんとなく両者の意見は食い違う。
Toshlからすると「アルバムの歌入れが全て終わったはずなのに、なぜまた新曲のレコーディングをしなければならないの?」となるのは当然だろう。Toshlにとって「アルバム完成」という約束を果たした今、X JAPANの活動は優先したいが、最優先にはならないということだろう。そんないつもと違う雰囲気を察したYOSHIKIがHYDEに依頼するのも、心情的にはわからないでもない。
Toshlからすると「復活当時に決めた約束は果たした」
YOSHIKIからすると「まだ世界の壁は壊していない」
いま何よりも深刻なことは、復活から11年経ちYOSHIKIとToshlの「X JAPANとして目指すゴール」が変わってしまったことなのではないか。この状況を打破するには、
「アルバム発売後のX JAPANのビジョンをYOSHIKIとToshlが共有できるか?」
が重要であり、それが決まらない限りX JAPANのNewアルバムの発売は「ない」だろう。発売したところで、その先には何もないのだ。
2018年9月15日のライブ終盤、カーテンコールが流れる中、ふいにYOSHIKIはToshlの手を握って花道を駆け抜けた。少し照れ臭そうにはにかむToshl。今思えばそれはYOSHIKIの無意識の意志表明だったかもしれない。「俺が引っ張るから、一緒に世界に行こう」と。
その時からもうすぐ1年が経とうとしている。X JAPANの時計の針は今も動いているのだろうか。その答えはメンバーだけが知っている。
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コメント
YOSHIKIニューアルバム早く出せ!
ずっと待ってるんだよ!
11月20日に出して欲しい!
書いてある通りだと思った。復活した時の想いと現在の想いは変わってしまっている。
YOSHIKIはXJAPANが全てだけどTOSHLはXJAPANが全てではない。復帰した時はYOSHIKIの手が必要だったけど今は独りでもやっていける。そう思っていると思う。
だけど私は、全てはXJAPANという後ろ盾があるからだと思っている。
ヨシキとトシの間にX JAPANへの想いの質の差が出てるのは見てて明らかに分かります。
もしかしたら、ヨシキはアルバムを出すことによってトシとの関係性が本当の意味で
『終わる』のが怖いんじゃないでしょうか?
ブログ内容に概ね同意します.ただ,RED SWANの件があった後,2018年9月15日のライブの後にToshilのHPからXJAPANの項目が無くなっていますので,時系列的に無関係ではなさそうです.それからHYDEの2019年2月インタビューで,RED SWANの依頼は一年くらい前からとのことを言っているため,RED SWANのVo.が急遽ToshlからHYDEになったわけでもなさそうです.
献身的に支えたHIDEがいなくなったことが災いして,徐々にYOSHIKIの決定力のなさや価値観を表面化させているのだと思っています.