いよいよ2017年3月3日にX JAPANのドキュメンタリー映画のサウンドトラック「WE ARE X」(作品と同名のアルバム)が発売されます。X JAPANにとっては復活後2枚目(※)のCDパッケージでの発売となる本作の魅力をあらゆる角度から徹底解説します。
※1枚目は2014年6月に発売された「THE WORLD~X JAPAN 初の全世界ベスト」というベストアルバムです。
昔からのファンの方はこの一文だけでわかると思いますが、今回のサントラは発売元がSONYになります。「それがなに?」と思われるかもしれませんが、これはX JAPANにとっては非常に興味深いことです。
SONYといえばXが1989年にメジャーデビューしたときのレコード会社であり、アーティスト契約と同時にマネジメント契約も交わしていました。その為、X時代にリリースされた楽曲の盤権(ライブ音源も含む)は今でもソニーが持っており、X時代の楽曲はX JAPAN自身ですらソニーの許可なしに、他レコード会社からリリースすることはできません。
決して仲違いをしたわけではないですが、版権の問題から疎遠になってしまったSONYとYOSHIKI。そんな両者が再度契約を交わし、X JAPANのアルバムが25年ぶりにSONYからリリースされるとは誰が想像していたでしょうか。アルバムのブックレットに「SONY」と入っているだけで、昔ながらのファンは感慨深いものを感じるはずです。
アルバムの楽曲リストをみれば一目瞭然ですが、X時代にリリースされた楽曲は一部を除き、すべてX JAPAN時代のライブ音源です。せっかく盤権を持つSONYからリリースされるアルバムなので、全曲オリジナル音源で収録してほしかったですが、ソニーとの版権問題には踏み込まなかったようで、X時代のオリジナル音源は収録されていません。
2. Kurenai [From The Last Live]
3. Forever love
4. A Piano String in Es Dur
5. Dahlia
6. Crucify My Love
7. Xclamation
8. Standing Sex [From X Japan Returns]
9. Tears
10. Longing ~Setsubo no Yoru~
11. Art of Life -3rd Movement-
12. Endless Rain [From The Last Live]
13. X [From The Last Live]
14. Without You [Unplugged]
しかし「A Piano String in Es Dur」(邦題:Es Durのピアノ線)と「Xclamation」の2曲はX時代の楽曲で且つオリジナル音源です。これはX JAPAN時代にこの楽曲を演奏したライブがなかったためライブ音源で収録できず、この楽曲だけソニー側の粋な計らいでオリジナル音源が収録された・・と好意的に解釈しておきましょう。
※ちなみにX時代とX JAPAN時代のオリジナル音源が混じったアルバムは1枚だけ存在します。
それは2001年12月にユニバーサルからリリースされた「X JAPAN BEST -FAN’S SELECTION-」です。これだけがレコード会社の利害関係と、版権者の垣根を越えて発売された唯一のアルバムといえます。(現在は廃盤)
本作はジャケットが青と赤の2種類が存在します。違いは赤版がボーナストラック2曲を追加収録した日本向けのアルバムで、青版がボーナストラックがない海外向けのアルバムです。価格的にはAMAZONで見ると青版のほうが1000円ほど安いですが、赤版には、
2. Forever love [From The Last Live][Japan Bonus Track]
が収録されますので、この2曲のライブバージョンを持っていない方には赤版がおすすめです。この2曲は、「Rusty Nail」が1997年にリリースされた「LIVE LIVE LIVE TOKYO DOME 1993-1996」が初出、「Forever love」は2001年5月にリリースされた3枚組の『The Last Live』が初出で、それぞれリマスタリングしたものと思われます。
サントラの10、11番目の楽曲は、X JAPANのオリジナルアルバムに未収録の楽曲です。
10. Longing ~Setsubo no Yoru~(邦題:Longing ~切望の夜~)
アルバム「DAHLIA」に収録されている「Longing ~途切れたメロディー~」のオーケストラアレンジバージョンです。「Longing ~途切れたメロディー~」と歌詞は同じですが、アレンジが一新されています。X JAPANの12番目のシングルとして発表され、シングルの3曲目では、オーケストラ演奏にのせてYOSHIKIの詩の朗読が収録されている異色の作品です。サウンドトラックにはインストゥルメンタルバージョンで収録されています。
11. Art of Life -3rd Movement-
副題に付けられた-3rd Movement-というのは、「Art of Life」の第3楽章のことを指します。30分にも及ぶ超大作である「Art of Life」は、大きく3つの楽章に分かれており、本楽曲はYOSHIKIピアノソロ以降を編集した楽曲です。
「Art of Life -3rd Movement-」というタイトルは初出ですが、楽曲自体は1999年2月に発売された3枚組のベストアルバム「PERFECT BEST」に、「ART OF LIFE(Radio Edit)」というタイトルで収録されているものと同一と思われます。
※余談ですが「PERFECT BEST」には、このアルバムでしか聞くことができないインディーズ時代の「Stab Me In The Back」が収録されています。(現在は廃盤)
「Without You」は亡きhideに捧げたレクイエムであり、2007年の再結成のきっかけを作った、X JAPANにとってかけがえのない大切な楽曲です。
今まで数多くのバージョンが発表されてきましたが、本CDには 「Unplugged バージョン」として収録されています。 「Unplugged」とは音楽用語で「生楽器だけで演奏している」という意味です。本楽曲はYOSHIKIのピアノとTOSHIの声だけでシンプルに構成されています。過去のライブでは、YOSHIKIとTOSHIの2人で演奏されることがほとんどで、楽器隊が入ったバンドバージョンは存在するものの、ライブでは一度も演奏されたことはありません。当然音源化もされていません。過去の記事でも触れましたが、本楽曲のバンドバージョンのスタジオ音源が発表されることはないと思いますので、是非本CDで聴いてみてください!
映画のエンディングテーマを飾るX JAPANの新曲「La Venus」が、Acoustic Versionとして収録されています。新アルバムにはバンドバージョンが収録される予定なので、「Acoustic Version」はサントラの為だけに新たにレコーディングされたものですが、この当時のYOSHIKIのSNSを見ると・・
とレコーディングは過酷を極めたようで、最終的にはこんな状態に・・
そんなYOSHIKIがファンのために全身全霊を込めて作り上げたX JAPANのサウンドトラック。ファンならずとも必聴です!